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高還元SESという言葉が流行っている背景を考えてみた
高還元SESが注目される理由は何か?この記事では、高還元SESのメリットとデメリット、企業とエンジニアの視点からその背景を深掘りします。キャリア選択に迷っているエンジニア必見の内容です。
公開日:2023年9月15日
最終更新日:2023年11月28日
目次
高還元SESという言葉が流行っている
そもそも「SES」ってどういうものだっけ?
エンジニアの論理
企業の論理
『高還元SES』という言葉の役割
企業のメリットとエンジニアのメリット
高還元SESのデメリット
まとめ
BlackBoxについて
高還元SESという言葉が流行っている
最近、「高還元SES」という言葉を見かけることが増えた。
「高還元」という単語がなんともキャッチーである。ポイントも高還元だと嬉しいし、税金でもなんでも還元してもらえると嬉しいものである。
キャッチーな言葉故に、興味を引き、話題にあがることも多い。言葉として定着しつつあると思うが、実はこの高還元SES、「既存のSESとは異なる革新的なビジネスモデルの変化」というわけではない。
言ってしまえば「顧客から支払われる金額のうち、社員の給料として支払われる金額の割合が高い、いままでと変わらないSES」ということである。
今回は、この言葉が流行っている背景について考えていきたい。
そもそも「SES」ってどういうものだっけ?
まず、前提としてSESとは何か?ということについて改めて確認したい。 (※よくご存知の方は飛ばしてもらって構わない)
SESとは「System Engenerring Service」の略で、会社が顧客に対して情報系システムに関するエンジニアリングを行うサービスである。通称として使われることが多いが、一般にSESといえば、
- IT企業(IT人材を雇用している企業)が顧客に対して、システム開発に関する業務の遂行を提供すること。(※実態としてはエンジニア個人単位で契約し、そのエンジニアが委託業務を遂行することが多い)
- 契約は企業間の業務委託契約における準委任の区分で締結すること。
- 契約金額やその他契約条件は、企業間で合意決定すること
- IT企業の評価制度で、エンジニア個人の給料が決定されること
であると考えている。
ここで注目したいのが、
- エンジニアの給料
- IT企業と顧客との契約金額
双方の決定権(交渉権)をIT企業が持っていることである。
エンジニアの論理
例えば、あるエンジニア(以降、Aさん)を年収400万円で採用したIT企業が、顧客に対してAさんを年間1200万円(月100万円)で提案し、契約に至った。
Aさんからすると100万円という数字は会社側で決められたものである。
となると、「Aさん個人としてはどう思うか」という話である。
自分の年収は400万円、一方顧客から年間で支払われる金額は1200万円である。
好意的に受け止めるか?懐疑的に受け止めるか?会社への信頼で大きく変わるが、
「俺が顧客に常駐して、汗水垂らして稼いだ残り800万円はどこに消えたのか?」
こう思う可能性は高いだろう。
- もしかすると、必要以上に営業にお金を払っているのかもしれない。
- もしかすると、間接業務に無駄にお金を使っているのかもしれない。
- もしかすると、経営幹部の懐が潤っているのかもしれない。
疑念を持ちはじめると、際限がなくなる。
顧客の目線で考えるとAさんは「1ヶ月働くだけで100万円かかる人材」として見られている可能性もある。実際には1ヶ月33万円なのに、Aさんは顧客にサービス提供を続けるわけである。
企業の論理
一方、企業。
経済活動を進める以上、利益を獲得しないわけにはいかない。
たとえ、悪意がない企業だとしても、 営業活動、採用活動、経理・財務、法務、といった基本的な企業としての機能。
それに福利厚生、オフィス賃金、光熱費、備品、通信費...etcとお金は沢山かかる、どうしよう、という状況なわけだ。
それに明日、自社の社員がセキュリティインシデントを起こして1億円の損害賠償を請求されるかもしれない。
明後日には、契約している社員が病気で仕事ができなくなるかもしれない。
今週末には、予定されていた顧客からの支払いがされないかもしれない。
リスクを考えればキリがない。
企業からすると「不足の事態に備えてある程度の利益を確保しておくか」となるわけである。
損害賠償リスクに対しては保険の掛け金のような役割も果たしていると言えるだろう。
当たり前だが還元率100%とはいかないわけだ。実際、還元率60%でもきついかもしれない。
『高還元SES』という言葉の役割
エンジニアの論理と企業の論理。
お互いの論理をお互いに理解し、適切な妥協点を見つけることが一番良いことだと思うが、現実ではそうもいかない。
企業からすると社員は1人ではないが、社員からすると企業は1つなのだ。
積極的なコミュニケーションで対応できる部分もあるが、擦り合わせが難航するのは当然であろう。
エンジニアが「企業が考えているか」を理解しようとしても、その機会を得るには相応の努力が必要である。
企業に悪意がなくとも、エンジニアからすれば情報がないだけで「やっぱりSESは闇だな」となる可能性が高い。
もしかすると実際は悪い条件ではないのだが、転職を決意するかもしれない。
そもそも『SES』という言葉は印象がよろしくない。
「SESに入ると家電量販店で働かされる」 「SESでは経歴詐称を強要される」 「SESはエンジニアを搾取の対象として見ている」
このような話はネット上でよく聞く話だ。
現実に起こったことが原因だとしても、真面目に活動している会社からすると、これらのイメージはマイナスでしかないわけだ。
ここで『高還元SES』という言葉が登場する。
- エンジニアと企業の論理の不一致
- 『SES』という言葉のマイナスイメージ
これらを一挙に払拭するために、「高還元SES」が使われているのではないだろうか?
言葉を変えることでイメージを変えるのである。
企業のメリットとエンジニアのメリット
企業からしたら、『SES』という言葉のイメージを変えることにはメリットがある。
最も大きなメリットが「エンジニアを採用しやすくなる」ということだ。
『SES』というビジネスモデルである以上、エンジニアを何人雇用しているか、で売上利益が決定する。
増えれば増えるほどお金も稼げるし、企業としてやれることも増えるわけだ。
会社を作る以上、お金を稼ぎたいのか、何かやりたいことがあるのか、世の中の社長は理由をもって会社を作るわけなので、できることなら大きくしたいというのが本音であろう。
そのために過去の『SES』という言葉が足枷になっている。実態として社員の還元率を高めても、それがアピールできなければ意味がない。だったら新しい言葉を作ってしまえとなる。
もちろん、言葉だけの問題ではない。
各社、企業努力は進めているのだろう。
- 本社機能の圧縮とコスト削減
- 評価制度や給与設計の見直し、透明化
- 案件選択ができるような社内制度、営業体制の確立
- 技術研修などキャリアアップのための福利厚生の充実
などエンジニアにとって魅力的な環境を提供することをアピールするために、『高還元SES』が活用されているのではないだろうか?
エンジニアのメリットは一目瞭然である。高還元SESが実現されれば、給与UPという直接的なメリットが得られるわけである。
エンジニアからすれば自分が顧客のために働いているのだから、しっかりと働いた分を還元してくれる制度はとても魅力的だ。
高還元SESのデメリット
ここまでくると高還元SESはメリットばかりじゃないか! と思う方もいらっしゃると思うが、少なくともエンジニアにとってはメリットばかりではない。
デメリットもある。
正確に言えば『高還元にするからこそのリスク』がある。
営業力か還元率か
たとえ還元率が80%だとしても、 顧客との契約単価が高くないと意味がない。
- 100万円の80%は、80万円
- 60万円の80%は、48万円
どちらも還元率は80%である。
単価は個人の能力で決まると思っている方もいるが、 企業の提案力や交渉力、またブランドによっても大きな差が生じる。(※筆者としては単価決定については企業の要因がぶっちゃけ多いと考えている)
給与制度、評価制度、福利厚生が充実していたとしても充実さの根源は顧客との契約単価で、ここがしっかり確保されていない限り制度面をいくら整えようが機能しない。
一概に高還元SESを謳う企業は営業力が低いというわけでないが、高還元にする分、どこかを削っているのは事実だ。
だからこそ高還元だけを理由として、会社を選ぶということについては控えた方がいいだろう。
しっかりと高還元を実現している仕組みや、メリット・リスク双方で語ってくれる会社を選んでほしい。
自分の力次第
単価連動の場合、エンジニア自身の個人能力によって給料も変わる。
理想的な能力、実績があれば話は簡単だが、そうではない場合、自らのスキルアップが給料アップの命綱となる。
従来の企業であれば一定の社歴に合わせての昇給や、年齢に合わせてのベース金額の保証もあるが、高還元SESではそれらを削り、完全な単価連動型の給与に振り切っている場合もある。
いずれにしても自分次第ということだ。
ただここについては事前に内部情報を公開している企業も多いので、自分自身でやっていけるかどうかということを確認した上で考えるのがよいだろう。
まとめ
さて、今回の記事では『高還元SES』という言葉が流行っている背景について考えてみた。
私としてはSES企業のブランディング、マーケティング戦略の一環として流行っている(企業が使っている)言葉であると考えている。
「何か新しいものに対する期待感」「SESとは違う新しいもの」という希望を感じる言葉になっているのがこの言葉の強いところだろう。
ただ本質的なビジネスモデルとしては従来のSESと変化はない。
高還元SESだからといって勝手にお金が湧いてくるわけではない。
今後、高還元SESに転職を考えている方がいれば、メリットデメリット双方を把握した上で企業を選ばれることをおすすめする。
筆者 : BlackBox運営
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記事はこれで終了です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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